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ヴェニスの商人注釈

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【「ヴェニスの商人」注釈】

[#注1]イタリアの北東部、アドリア海北端のヴェネツィア湾に臨むところにある。日本では一般的にはヴェネツィアと称される。
[#注2]ヴェネツィアで造られた金貨。重さ3.56グラム、二十四金、純度0.997を誇り、1284年の製造以来、国際通貨としての地位を約500年間保ち続けた。
[#注3]民事の公正証書をつくり、私書した証書を認める権限を持つ特殊な公務員。
[#注4]1ポンドは約0.4536キログラム。
[#注5]ユダヤ人の祖先で、彼らの信仰の父とあおがれる人。
[#注6]B.C.95-B.C.46、ローマの哲学者兼愛国者。
[#注7]カエサルを殺害したあのブルータスである。
[#注8]Apocrypha(ギリシャ旧約聖書などに含まれる一経)の中に現れる、若くしてその才能を謳われた名法官。
[#注9]scruple=20grains(grainは重量の最小単位)。これから、きわめて微量の意。

【「ヴェニスの商人」に関して】

この物語は、The Tales from Shakespeare:Designed for the Use of Young People(若き人々のためのシェークスピア物語)と題して、1807年に出版された本の中の一遍です。この本の著者はCharles&Mary Lamb(C&M.ラム)ですが、下に挙げた本の解説には、THE MERCHANT OF VENICEはMary Lambの執筆となっていたので、作者をMary Lamb単独にしました。

この翻訳は、評論社ニュー・メソッド英文対訳シリーズCー14「ヴェニスの商人・オセロ」(1993年1月20日発行)より、THE MERCHANT OF VENICEを翻訳したものです。原文が、作者が書いたままだということで、原文に関しては著作権がすでに切れていると判断しました。なお、翻訳の際には上記本についていた対訳および注記を参考にさせていただきました。

一部《》によってルビをふってあります。

【訳者あとがき】

まずはじめに、翻訳に関してkatoktさんに指摘を頂いたことを感謝します。

イタリアに関する一連の作品で有名な、塩野七生《しおのななみ》さんが、ヴェネツィア共和国の歴史を描いた『海の都の物語(上)<中公文庫>』において、『ヴェニスの商人』に関してこう書いています。

『ヴェニスの商人』のアントニオは、困っていた友人に代って、高利貸のシャイロックから大金を借りてやる。担保は、彼自身の肉1ポンドだ。それが、持船が沈没して払えなくなったために起る話だが、ヴェネツィア商人の損害の分散方式は実に徹底していたので、持船の何隻かが沈没してしまったから一文無しになるというのは、なんとしても非現実的である。まずもって、一隻の船全部を所有していたということも、遠距離用の船ならば、ヴェネツィア有数の財産家でなければありえない。しかも、所有していたとしても、その船に自分の商品だけを満載して航海に出すというような事態は、ほとんどといってよいほど起りえない。また、シャイロックから借りた金《かね》は、三千ドュカートという大金である。高利貸から借りたとしても、このような大金をたった一人から借りたというのもうなずけない。必ず何人かに分散して、つまり担保をなるべく少額にして借りたはずである。
(以上、『海の都の物語(上)<中公文庫>』から引用)

持ち船が沈没したことで、借金を払えなくなることはそんなに現実離れしているとは思えないのですが(単に手元にお金がないだけとみなせばいい)、シャイロックだけから借りるというのは確かに現実離れしてるな、と感じました。

とはいえ、塩野さんも書いているように、戯曲が史実に忠実である必要は、出来栄えさえ良ければまったくないのです。ヴェネツィアを世界的に有名にするのに貢献したということで、独自の世界を味わえばいいのだと思います。

それにしても、シャイロックの方にかなり同情してしまいます。日頃から、自分の商売の仕方をさんざんに言われるだけでなく、犬といわれてつばをはかれて、足蹴にされるという惨状。これは肉一ポンドを担保にしたくなります。だいたいバサーニオはアントニオと仲がいいだけでいい目を見すぎです。派手な生活をして、素敵な奥さんを口説いて、結婚資金は友人持ち。ああうらやましい。

次があるとしたら、ヴェネツィアつながりで『オセロ』をやるでしょうね。ただ、たぶん今年中には訳されないでしょう。かなりいやになってます。

2001.07.05

原作:THE MERCHANT OF VENICE(TALES FROM SHAKESPEARE)
原作者:Mary Lamb

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この版権表示を残すかぎりにおいて、商業利用を含む複製・再配布が自由に認められる。プロジェクト杉田玄白正式参加テキスト。

翻訳履歴:2001年7月6日,翻訳初アップ。
2001年7月16日、katoktさんの指摘を反映。