わたしの好きな女優 高峰秀子さん 新村出 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)いますね。すいせんと[#「いますね。すいせんと」は底本では「いますねすいせんと」] -------------------------------------------------------  高峰秀子が好きです。「巴里ひとりある記」を人から借りて再三愛読しました。五月のはじめ東京からの帰り、郷里の静岡によって街の店さきで、どこかの写真文庫にあの人のグラフがのっているのをみつけ、なつかしい気がして車中人目をもはばからずひらいてみて来ましたよ。九月の初旬、大学生の孫娘にいざなわれて「遠い雲」をみに行き、感服して帰りに河原町三条のブロマイド屋で写真を買いこんで来ました。ともかくも私が日本の劇映画をみたのはソレ、三年前に森鴎外原作ということにひかれて行ってみた「雁」が生れてはじめて。偶然”お玉”の役のデコちゃんが気に入って、以来迷いこんだんですな。あの人はたいへん読書好きだそうだ。率直なザックバランなものいいもいい。粗雑な中に真情がこもっていますね。すいせんと[#「いますね。すいせんと」は底本では「いますねすいせんと」]いうよりファンですよ。近ごろ[#「ファンですよ。近ごろ」は底本では「ファンですよ近ごろ」]何かの会へ行っても「先生、デコちゃんの話を」と催促されます。もはや天下公認になりましたね。[#地付き](京大名誉教授・言語学者・八十歳) 底本:「週刊娯楽よみうり 臨時増刊」読売新聞社    1955(昭和30)年12月30日発行 入力:sogo 校正: YYYY年MM月DD日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。